大相撲8日目意地を見せつけた御嶽海 |
今日まで2勝5敗と精彩を欠いた御嶽海、今日の正代戦は大関には絶対に負けないという意地が勝った勝利である。立ち合いも気合の入った仕切りから頭を下げてぶちかまし、正代のいなしや小手投げに一度はぐらっと体が傾いたが、足を送り踏ん張ると右はずから正代の体制を起しそのまま寄り切った。まさに渾身の力を入れた相撲であった。
貴景勝、朝乃山を破ったのもその意地からであろう。それ以外の相撲は何となく粘りがなく勝負への執着も薄れていた。このところ黒い霧が漂っていた大相撲界、何らかの影響が御嶽海の気力をなくし稽古にも乗り気がしなかったのではないか、そのためか今日の相撲で全力を使い果たした顔は青ざめて見えた。貴景勝はもとより朝乃山、正代と今まで格下にいた力士があれよあれよと順調に大関になっていく中、関脇在位10場所と過去最多の記録や2回優勝の実績も何ら認められることなく関脇を陥落し平幕と三役を行ったり来たりのここ1年だった。
実績的には彼らの上をいく御嶽海がどうしたことか大関にはなれない。相撲界の空気が御嶽海に不利な条件を与え続けてきたのも確かであろう。稽古場では弱いが本番では強いなどなど揶揄されてきた。そうした相撲界への反発もあってか大関には絶対負けないといった意地が日増しに強くなっての結果だ。「よくやった」とその気力を褒めてやりたい。本来ならとうに大関候補としてその座を手中にしていたはずだ。不運の力士である。
まだ中日、明日からどういう相撲を取るか、そうしたことは問題ではない。貴景勝、朝乃山、正代の3大関を破った証ははっきりしている。彼らに番付の上では越されたが、力は御嶽海のほうが上だということを示した。それでよい、白鵬、鶴竜の両横綱不在の中、御嶽海の意地が少しでも明るさと希望を齎した一戦といえよう。今後たとえ番付が平幕に下がっても御嶽海には必ず大関横綱を目指す日が来る。それまでじっと我慢の中で見守っていきたい。
2021.1.17