尖閣諸島不法入国への甘い対応

過日台湾の活動家グループが尖閣諸島魚釣島へ不法入国した。彼らは、領土は中国のものであって不法ではないと叫んでいる。これに対し、日本政府はどうけじめをつけるのか。8年前にも同様な事件があったが、強制送還という形で終結させた。そして2年前の漁船妨害事件、これも船長を強制送還で釈放した。これらの一連の事件に対し、政府の対応を甘いと見るか、妥当と見るかである。

多くの国民は、甘いと叫ぶであろう、これが我が国の本音として、政府機関はしっかりと受け止めていただきたい。政府の外交措置の甘さが、北方領土へのロシア大統領の訪問、竹島への韓国大統領の上陸など思うがままの行動を許してきた。

こうした事件の裏には、常にアメリカが目を光らせ、自国にとって利益と不利益を天秤に懸けて傍観している。この点をもっとも注視しなくてはならない。アメリカは、中国との経済的協力を図るため、我が国に穏便な措置を求め、方や中国は日本に対して領土問題で迫る。この三竦みの中で、我が国はどう対応していくのか、苦しい立場は理解できるが、独立国としての矜持というものを示さなくてはなるまい。

だが、よく考えればこのトライアングルの関係は、アメリカにとっては中国の出方だけに注意すれば良く、日本の対応など二の次くらいに軽く考えていないかである。我々日本人が考えているほど、日米安保の抑止力など全くない。これは対ロも同様、我が国の領土を侵略されてもこれを防ぐことのできない事実は、いつまでもアメリカに頼っての防衛では不十分ということである。

戦後アメリカ追従型の外交は、自身での判断はできず、須らくアメリカの顔色を伺っての対応となってきた。今回の問題も、政府は強制送還という甘い、極めて遺憾な措置を講ずるしか手がなかったのも、陰で糸を引くアメリカの力があったと言わざるを得まい。

終戦67年の歳月は、日本に何をもたらしてきたか、経済の復興は目覚ましいかった。だが、その裏では、古来からの武士道にも通じる精神性がなおざりになり、諸外国に対して毅然とした対応が示すことのできない風見鶏の精神が、外務省をはじめとして、政府に根付いてしまったという大きな損失を生んできた。

尖閣諸島魚釣島への上陸は、一般的な不法入国の範疇ではない、領土奪回を目論んだ行動である。現法がどうかといった問題でもあるまい、危機管理の問題である。日本のコケンに関わる重要事件ではないか。この事件は、入国管理局の範疇を超え、日本としてどう処罰をするかの大切な局面であったはず、それを腑抜け同然の政府の措置は、強制送還である。せめて、1人100万円以上の賠償金の請求をすべきではなかったかである。

一般国民の考えと余りにも乖離した今回の措置、アメリカの顔色を伺いながらの対応に、国民は絶望と怒りをもって抗議しているのである。


2012.08


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