不甲斐ない陸上陣その原因は何か

昨年の世界選手権に続き、オリンピックでも全く力を出し切れないまま、敗退した日本陸上陣の不甲斐なさに大きなショックを受けている。特に巷の期待を一身に受けた女子100M、200Mの福島の走りは、国内の記録を疑うほどの結果となった。また、男子100Mの江里口も、福島同様、下馬評を覆す惨敗である。福島、江里口の場合、マスコミの過大評価と、余りにも騒ぎすぎた環境が、彼らを萎縮させた感は拭えない。

世界の舞台で力が出し切れない、選手は口々に「力が出し切れない、世界の壁は厚い…」と他人事のようにコメントしている節にも疑問がある。江里口に代わり一点の光明を与えたのが、若い山県の活躍である。彼の走りが、陸上陣の中にあって敢然と輝き、我々に感激を与えた。江里口、福島に共通する課題は、取り巻く環境であろう。特にコーチ陣の目線が何処においているか、日本選手権を制しオリンピックに出場できればそれでよし、といった甘い評価をしていないかである。

日本の代表として、オリンピックの舞台では自己ベストを出すという気構えが必要である。それには、マスコミを遮蔽し、練習に専念させるべきである。江里口にしても再三NHK等のテレビに出演し、取材を受けていたが、これが直接の原因でなくも多かれ少なかれ、遠因となったことも否めない。ただ、ジャマイカのボルトを引き合いに出せば、これらは全く理由にはならない、二人に本当の力がなかっただけのことである。

何も短距離陣ばかりではない、中長距離陣、マラソンと全て期待を裏切る結果となった。だが、女子5000Mの新谷と吉川の二人は、自己記録更新という健闘を示してくれた。それがせめてもの救いである。彼女達のように自己ベストを更新か、それに近い記録の末の敗退ならば、「世界の壁は厚い…」のコメントも道理である。他の外人選手が次から次と自己ベストを更新させてゆく中、何故、日本選手にはそれがない、不思議の極めである。

高校から、ケニアなど留学生を取り入れ競わせてきたのは何のためかと問いたい。また、マラソンなど選考会での陸連の対応にも疑問がある。それは、日本人トップでという条件付きが気に入らない。これでは端から外人選手にお手上げと、意識させているようなものではないか。この過剰意識が、今回のマラソンをはじめとする、長距離に何らかの悪影響がでたとしたらどうか、選手の精神教育の過ちとなろう。

外人選手は強いという過剰な意識が、日本人トップを狙い、井の中の蛙同様に、知らずとお山の大将俺一人に甘んじてしまう。陸連関係者は、早急にこの点を改め、外人選手がいようがいまいが、常にその頂点を目指すといった教育に徹するべきであろう。

とにかく、今大会、予選通過もままならない結果は、大いに反省すべきである。選考条件としてきたA標準記録の意義と、また過去に一度でも記録突破なら選考対象という甘いものではなく、現時点での選手の力を測るためにも、リアルタイムの結果を標準記録というフィルターにかけて選考すべきである。


2012.08


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