画材について

<絵具>
本格的に油彩画の製作に打ち込んだ、その時選んだのが「マツダスーパー絵具」である。なぜマツダにしたか、それは赤の発色がどの絵具より優れているといった理由からだ。色の中で赤という色は突出した魅力的な色である。ある美術誌のコマーシャルページに中川一政氏のバラの絵があった、そのバラの赤に魅かれ、それがマツダスーパー絵具である。画を始める誰もが思うであろう、良い絵具、良い筆、良いキャンバスで描きたいと。

<筆>
剛毛は豚毛の筆がよしとされているが、メーカーは行きつけの画材店と相談し、名村の筆を中心に揃えた。またおつゆ描きにはセーブルの筆がよいとされている。ロウニーを中心に名村のセーブル筆を揃えた。価格も一本2000円〜4000円と高い、豚毛でも太さ(号)によって違うが標準的な10号筆でも1000円前後した。

<溶剤>
私は松脂を原料とするテレピンを好んだ、石油を原料としたペトロールはイメージから避けただけであるが、テレピンとの差はそれほどなく専門家に言わせるとペトロールの方が扱いやすいといわれている。つまり、こうした溶剤はリンシードオイルやスタンドオイルと調合して使うことが多いのだが、ペトロールの方が溶いた場合変色しにくいというのがその理由である。テレピンは他のオイルと混ぜ合わせると多少透明性が欠けてくるということだろう。そうした点からテレピンも多少価格が高いが信頼できるルフラン製を使った。

<乾性油>
オイルは、主にリンシードオイルでメーカーはマツダとルフランが多い、そのほかおつゆ描きのためにスタンドオイルを揃えた。リンシードオイルとスタンドオイルの差は、粘りの差である、スタンドオイルはリンシードオイルを天日に晒して精製したもので非常に純度の高い良質なオイルである。

<その他>
油彩画の古典技法書の解説に、グリザイユ法に用いる溶き油として、テレピン9、ダンマルワニス9、スタンドオイル4、アルファーピネン2の混合を使うとある。ダンマルワニスは、松脂の固形(ダンマル)を綿モスリンの布に包んで、テレピンの溶液に1:4の比率で2.3日浸しておくとできる。アルファーピネンは速乾を促すために用いる。

<キャンバス>
キャンバスだけは手作りに徹した。技法書を読み私好みの「エマルジョン地」仕立てを用いた。元となる麻布はすでに膠を施してあるフナオカ製のキャンバス地を購入し、その上に塗る材料は、炭酸カルシウム、ジンクホワイトを同量調合し、温めておいた膠水(膠1:水10)または、凝固した膠水を泡だて器を用いて良く攪拌する、そしてその中にスタンドオイルを適量注ぎながらよく混ぜ合わせていく、スタンドオイルが塗料とよく混ぜ合った頃を見図り水を加え粘着性を確かめて終了である。

このキャンバスの特徴は、しっとりとした絵肌で、それはあたかも陶器のようなマチエールに仕上がる。それに比べ市販品のキャンバス(殆どは油性)は、油絵の具の艶はよく出るが、絵肌がぎらついている。


戻る